企業もスキルアップのために資格取得を手当て支給という形で応援する時代

昭和63年、労働省は、21世紀に向けて、ビジネスマンが経済社会の急激な変化に対応できる適応能力を身につけることができるよう、生涯職業能力の開発を提唱した。その推進策のひとつとして、企業に勤めるビジネスマンの資格取得を奨励している。

この提言に応じ、多くの企業が、社員の資格取得を補助する社内資格検定制度を設けるなど、社員の専門的な能力開発に力を入れるようになった。実際、このところ、資格をもっている社員に対してなんらかの手当てを支給する企業が増えている。社員の資格取得に熱心な三興トレーディング社では、資格を限定して、次のような「資格手当」を支給している。

司法書士…毎月3万円
弁理士…毎月3万円
通関士…毎月3万円
実用英語検定一級…毎月3万円
実用英語検定準一級…毎月1万円
日商簿記検定一級…毎月1万円
英文タイプ検定A…毎月1万円
秘書技能検定A…毎月1万円

一見すると少なそうだが、これが1年に12回、毎月きちんと支払われるのだから、有資格者と無資格者では生涯賃金に相当に差がつく。有資格者が昇進の面で優遇されるのは、いうまでもないだろう。

社員のライセンス取得を側面から応援する企業も増えている。会社が教室を設けて、宅地建物取引主任者や英語検定の講習会を開いたり、簿記検定、無線技術士、家庭電気修理技士などの通信教育の費用を会社が全額あるいは半額負担したり、中小企業診断士や実用英語検定の取得にかかった図書費の一部を出すなど、応援の方法はさまざまである。

資格取得のお祝いとして、一時金を出す企業も少なくない。積水ハウスでは、一級建築士、不動産鑑定士などの取得に対して、通信教育で補助するほか、取得の際に20万円の一時金を支給している。

中堅化粧品メーカーのノエビアでは、「うちの社員は働いてばかりいてはだめ」と、スキューバ・ダイビングの資格取得を奨励している。ダイビング・スクールの受講証を添えて、会社に資格取得の報告をすると、最高2万円までの奨励金が出る制度だ。このユニークな制度は同社の若いOLに大好評で、この二年間で、同社の社員の400人以上が、ライセンスを取ったそうだ。

一方、資格を取らないと出世させないと、資格取得を昇進。昇給の条件とする企業も目立ってきた。山一証券の総合職社員は、証券アナリスト取得が、証券マンとして当然なし遂げなければならない義務として課されている。

セントラル警備保障では、平成2年の3月から、業務上必要な警備員検定、危険物取扱者などの資格の有無を人事考課の基準にすると発表した。

消費者金融のレイクは、全国353支店の店長全員に銀行業務検定試験を受けさせている。この資格の取得状況をダイレクトに人事に反映させると社内に通達しているので、店長さんたちはいずれも資格取得に必死と聞いている。


企業が資格をどう評価するか
取得支援をしているか知りたい人に企業の人事部はどのような資格を評価するのか。

実際に、企業はどんな資格に対しても必ず高い評価を下すとは言えません。「取得した資格によっては評価する」「参考程度にとどめる」という企業が大多数です。

企業側の基本的な姿勢としては「資格を持っているからといって即戦力になるとは限らない。資格取得に向けて努力する意欲・過程をまずは評価する」といったところなのです。

そうはいっても、業界によっては「アピールになる」「業務の役に立つ」「評価される」強力な資格があります。

「義務付けまたは奨励している資格・検定試験」がある企業は7割近くもあります。建設業や金融・保険・不動産業界などでは、9割以上と圧倒的な割合の高さです。

各業種別に求められる資格は業種によって「かなり評価される資格」から「ある程度評価される資格」まで存在します。これらを見定めてから是非チャレンジしてください。

例えば、金融ビッグバンが進むにつれて業務が多様化し、ますます競争が激しくなる金融業界では、それに対応するために様々な手を打っており、資格取得を奨励している企業も少なくありません。「ファイナンシャルプランナー」は、顧客の家族構成、収入と支出、資産と負債、保険等のデータを集めて、相手に合った貯蓄計画、投資対策等を行う専門家です。

その他、資格ではありませんが、企業の財務内容などを調べて投資価値を評価する「証券アナリスト」や、会計部門の資格の最高峰である「公認会計士」などはかなり評価される資格です。銀行なら通常入行後に通信教育等で勉強させられるものですが、入行前に有していると実務能力をアピールできます。

企業側にとってもその実力を買えるとともに、通信教育の経費がかからないといったメリットがあります。

また、不動産業界における「宅地建物取引主任者」も評価の対象となる資格の一つです。従業員数に応じて、宅建資格者を一定数以上おかなければならないので、「持っていて当たり前」である大手不動産会社は別として、中規模以下の企業などでは有資格者かどうかが採用の際に合否を分けると言われています。

結局、企業にとっての資格・検定試験の機能を分類すると、大きく分けて4つあります。

①法規や業界取引上の要請に対応する機能(それは法律上必要になるから)
②知識・技能の修得を促進する機能(それを知っておくとスキルアップになるから)
③自社の従業員の職業能力を対外的にアピールする機能(それは外部に評価されるから)
④企業内の職業能力評価を補完する機能(それは仕事ができる証明になるから)

個々の資格・検定試験がどの機能の上で重要であるかによって企業内におけるその位置づけも異なってきます。ぜひこれらに注目して、自分で今後必要と思われる資格を考えてみてください。

命企業の資格取得支援制度にはどんなものがあるか?資格取得を奨励している企業は、さまざまな形で「社員の資格取得を支援する制度」を用意しています。それらを大きく分類すると、次のようになります。

①企業が指定した資格を取得すると給与に手当が加算される(公的資格手当を支給)
②企業が指定した資格を取得すると、合格時に合格祝い金が支給される(祝い金・奨励金を支給)
③企業が指定した資格を取得すると、その資格取得にかかった受験料・スクール代・通信教育にかかった費用を精算する支援制度がある(資格取得費用を支給)

何らかの形で資格取得を援助しようという企業が8割を超えます。特に、業務に関連のある資格について、金銭的なバックアップによって、社員に何らかの動機付け、意欲付けをしようという企業の姿勢がうかがえます。では、具体的に制度についてみてみましょう。

1 公的資格手当を支給する場合
「公的資格手当支給」とは、毎月の給料に加えて一定額の金銭を受け取れる場合をいいます。実際に資格手当を支給している企業は4社にI社以上の割合になっています。

手当の支給条件としては、当該資格に関連する業務に従事する場合にのみ支給するケースが約半数ですが、それ以外の人に支給されるケースもあります。資格別にみた手当支給額を紹介しています。

会社を辞めない限り、毎月の給与にこの額が反映されるわけですから、この表を参考に、自分がどの資格に挑戦すればどの程度の収入アップにつながるのかを検討できます。

2 祝金・奨励金を支給する場合
「祝金・奨励金支給」とは、資格試験に合格した際に一時金として一定額の金銭を受け取れる場合をいいます。毎月支給される公的資格手当とは異なり1回ですが、その分金額も大きくなっています。実際に祝金・奨励金を支給している企業は3社に1社以上の割合です。やはり、難関の大きな資格や業務に直接関連する資格の支給額が多くなっています。

3 資格取得費用を支給する場合
「資格取得費用」とは、資格を取得する際の受験料、テキスト代、講習会などの参加料、交通費などの全額または一部をさします。実際に資格取得費用を支給している企業は約7割にのぼります。手当の支給条件としては、当該資格に関連する業務に従事する場合のみ支給するケースがほとんどです。

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