1.会社の中でのんびりとしている社員は資格を取らないと将来はない

企業内の職務の細分化、専門化、高度化も著しい。その道のプロやスペシャリストでないと、対応しきれないような種類の業務が企業内の各部署で急激に増えている。

極端な話、隣のデスクの人が、どんな職務をどのように処理しているのかを知るには、その人が携わっている仕事について専門知識を一から勉強しなおさないと理解できないような労働環境になりつつある。

作業効率を上げる目的で導入されたOA(オフィスオートメーション)、FA(ファクトリー・オートメーション)が、そうした傾向に拍車をかけているのはいうまでもない。

企業の本音からいえば、人減らしや人件費を抑えようと導入したOAであり、FAである。現場に携わる人員が少なくなった分だけ、残った人間には高度かつ広範な専門知識が求められる。すでに顕在化した見えやすい例が、OAの導入によるオフィス革命であろう。

大企業はもちろん、中小の企業でも、ソロバンをはじき、伝票にボールペンを走らせる昔日の風景が、オフコンの居並ぶ近代的な労働空間へと一変した。と同時に「キーボードなんて、見ているだけで鳥肌が立つ」というような古株の社員が、口うるさいだけでまったく役に立たず、組織のなかで孤立していくのを、多くのビジネスマンが目撃しているはずだ。

業務環境はものすごいスピードで年々変わっていく。ビジネス戦線に身を置く人なら、誰もが自分の仕事が年を追って、専門的になり、他人に任せられないものになっていることを感じているだろう。

また、製鉄会社が遊園地の経営に乗り出し、総合商社が居酒屋チェーンの経営に手を染めるような多角経営がもてはやされる時代だ。

企業の一兵卒は、明日はどういう業種のどんな戦場に即戦力として駆り出されるのか、まったく予測がつかない。

上から求められた新たな職務に対する学習を怠り、職場の変化についていけない社員、ただのんびりと大過なく会社で過ごしているだけの社員は、走り続ける組織から取り残されるだけなのである。

かつて、住友生命が先鞭を切ったのをきっかけに、多くの生命保険会社が総合金融機関を目ざし、社員に銀行業務検定を受けるよう指導を始めるようになったときに話題になったのは、ほかの金融機関の受験者の合格率が20~40%だったのに対し、生保陣の受験者の合格率が70%を超えたことである。

この数字は、生保障の意気込みを示すものと金融業界人たちを驚かせたが、裏を返せば、それだけ生保の社員が会社から尻をたたかれた証左である。

合格したある大手生保会社の社員Mさんは、「私どもの業種は、他の業種と比べると、勤務体制にゆとりがある。時間的にもバックアップ態勢のうえでも、会社は十分に便宜をはかってくれた。それだけに、不合格は絶対に許されないという雰囲気でした」という。

一人一人の受験者が、新たに会社から求められた専門知識の実力を公的に認めてもらおう、社内で取り残されてはいけないと、必死だったのである。

そうした反面、各企業で、専門知識を得たその道のプロやスペシャリストが重用されている。欧米型の能力中心型活用が採用されつつあるのである。求人情報誌の調査によると、管理職への昇進を、年功序列ではなく、業績。能力で決めると答えた企業が、2000社中の1000社近くにのぼっている。

ボーナスの支給額では、さらに能力中心型の査定がはっきりしている。今では、同期入社にもかかわらず、ボーナスの査定に100万円も差がある例が続出しているそうだ。同誌のなかで、大手半導体メーカーの人事部長はボーナス査定の基準について、このように答えている。

「ボーナスは、支給間近の6ヵ月実績をメインに、それ以前の実績と能力、熱意でみます。実績50%、能力20%、熱意30%の割です」

また、すでに多くの企業で、いわゆる専門職制度が採用されている。専門的な知識と高度な技術をもつ従業員を、一般ラインの管理職とはせず、第一線の現場でフルに能力を発揮させる制度である。

近年、各企業とも開発部門の仕事の重要性が増したため、スペシャリストを育成するこの制度が一躍注目されている。より深刻化する管理部門のポスト不足を補う意味もあって、10年後には、90%の企業が専門職制度を採用すると予測を立てる人もいるほどである

2.崩れ始めた終身雇用制

このような現象は、とりもなおさず、サラリーマンを取りまく企業内での労働環境が急変してきた証にほかならないだろう。

「うちの会社のやり方が変わってきた」「今のうちに手を打っておかないと、自分は取り残されてしまう」と職場の変化を身をもって感じ取ったサラリーマンが、いち早く自己防衛に動き出しているのである。

高度成長から安定成長へと経済の流れの節目を迎えた昨今、実際、サラリーマンの労働環境はどのように変わりつつあるのだろうか。ショッキングなデータを見ていただこう。

労働省の人事・労務管理研究会が、先ごろ、一橋大学に委託し、雇用に関する大規模な企業アンケートを行った。アンケートの対象となったのは、従業員300人以上の上場会社、従業員1000人以上の非上場会社を合わせた約2000社。

多くの質問のなかで、注目すべきなのは、社員の終身雇用をめぐる事項だろう。なんと終身雇用制度をかたくなに守っていきたいと考えている企業は、全体のわずか32.8%にすぎない。

さらに、「40歳を超えたら、定年までの雇用保障の困難さを認識して、自身の転業能力を高め、当社での雇用継続に過大な期待をもたないでほしい」とはっきり答えている企業が、36%にもなっている。

日本企業独特の大家族的な終身雇用制度は崩れようとしている。今いる社員には、定年までになんとか辞めてもらいたい、というのが、少なからぬ企業の本音らしい。

この先は、終身雇用ならぬ「半身雇用」が企業の雇用方針の根幹になる可能性が高いのである。各企業内の年齢構成からいって、半身雇用の波をもろにかぶるのは、おそらく40代に突入した団塊の世代であろう。

この世代の人たちがかつてない高学歴であるため、ポスト不足や昇進の遅れもより深刻な問題になるにちがいない。団塊の世代が50代になるころには、およそ8割もの人員が企業にとって事実上不要な存在になるとの予測もあるくらいだ。


3.社会的評価の高い「士(さむらい)業」

独立開業を目ざす、ということはつまり安定したサラリーマン人生を捨て、自由業になることだ。がんばればそれだけ収入につながるが、収入は不安定になり、危険もともなう。これが自由業の宿命という。

しかしながら、同じ自由業のなかでも、税理士、公認会計士、弁護士など「士」のつく業種、一般に士(さむらい)業といわれる職業は、社会的な評価が高く、リスクが少ないことが知られている。と、同時にさきほどもふれたとおり、試験はけっしてやさしくない。はっきりいって簡単には取得できない資格ばかりだ。

だから、ただ漠然と「この資格が取れたらなあ」などと考えているだけでは、一生かかっても資格の取得は無理だろう。

目標を決め、資料を集め、勉強にどのくらい時間を費やす必要があるのか、何年で取るつもりなのか、自分の実力と勉強に費やせる時間を含めて、じっくり検討しなければならない。そのうえで、地道な努力を積むことである。

熱意と行動力、そして計画性があってこそ、資格取得は成就する。取得が難しいからこそ、高収入や社会的な地位が得られる。そう肝に銘じて、努力を重ねてほしい。
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