教育費用や学費って一体どれくらいかかるの?進路ごとで比較したまとめ

1.高校卒業までの費用
具体的に教育の費用を検討してみる。最近の週刊誌での特集記事によれば、大学卒業までに最低でも3000万円必要とあった。この出典はAIU保険会社の試算結果である。

正式には『出産から22年間の総費用』と題して、大学卒業までに要する養育費の総額である。養育費であるから、それこそ出産費用から、お小遣い、衣食費まで計上されている。そこで、純然たる教育費だけについて取り上げると、オール公立で1345万円から、私立医大の4424万円と大きい開きがある。

中高一貫の私学に入学することが、大学入学の必要条件として推算されている。中学受験のためには小学三年生ころより塾に通うことが必須とされており、そういった費用も合算されている。

一方で、地方都市や郡部では、中高一貫の私学教育は一般的ではないと思われる。そこで、取り扱う教育の費用については、都会でのことと仮定することにした。

塾の費用とはいくらかかるものなのか。この記事によると、小学三年から五年次の平均が30万円以上、これが六年次には倍増するとのことである。したがって、小学校での塾の総費用はおよそ170万円弱となる。

しかし、実際にはもっと細かく検討する必要がある。塾の送迎や、補助教育費、大学受験の場合は、浪人率、入学してからの留年率、卒業後に国家試験の受験が前提の学部の場合の合格率である。こういった要件を考慮しつつ、真の教育費用負担の実像に迫ってみたい。

送り迎えに要する時間を往復一時間として、仮に時間給800円として計算してみた。交通費は往復200円として、合計一回の通塾に1000円かかるものと仮定した。三年から五年までの三年間で、週一回として150回、六年次には週三回として合計300回、30万円。塾の費用と合わせて200万円ということになった。家庭教師を頼む場合はもっと高額になるだろうが、一般的な中学受験のための塾の費用として、200万円というのが最低ラインということになる。

中高一貫の私学の費用は、六年間で500万円程度が一般的と考えられる。ここでも六年間の塾や予備校での補助教育を求めたと仮定すれば、六年間に300万円程度であろうか。高校卒業までに要するのは、この時点で合計1000万円ということになる。

公的な教育費用に関する統計的推算が文部科学省から報告されている。全国平均であるから補助教育費は皆無の家庭も含まれるので、あくまでも参考値であるが、公立中学校で学校教育費は13万円、補助教育費は30万円、その他合わせて、おおよそ50万円弱と言われている。これが私立中学校では130万円である。ここまでは大学受験までに要する費用である。整理す ると、小学校から私学の場合、合計1700万円。中学校から私学の場合、1000万円。すべて公立の場合、補助教育費のみの300万円ということになる。


2.大学卒業までの費用
大学での学費は、国公立と私学では格差が大きく、学部により就学年数も異なり単純に比較できない。 したがって、学部ごとに最小から最大の学費を具体的に羅列せざるをえない。

また就学年数で見逃せない要因がある。医学部のように卒業後国家試験に合格することが前提になる場合、正規の6年目に晴れて医師免許を手にする確率も勘案する必要がある。具体的には入学後2年目、4年目に進級試験があり、本年度から、4年目に臨床医学就業のための試験が導入され、さらに卒業試験が課せられ、その後に医師国家試験に臨むわけである。

2年目ごとの進級試験と卒業試験の留年率が5パーセントとして、国家試験の合格率が90パーセント弱として計算すれば、0.95の三乗に0.9を掛け算して0.72となる。これは平均的な国公立大学の比率である。私立大学によっては、この比率が0.6を下回るところもある。

したがって、6年間に要した学費にこの数字で割り算する必要がある。具体的には正規の学費が6年で300万円としたら、医師免許を取得するためには420万円必要ということになってしまう。 大学の種類によっては、6年正規の学費が5000万円に対して、実際は9000万円ということになる。

こういった事情も計算に入れて、具体的に学部ごとに卒業までの学費を算出した。ここで、この係数を仮に留年係数ということにして、以下具体的に平均的な学費をこの数字で除することで、少しでも真の費用に近い値を求めていきたいと思う。

経済学部(経営学部、商学部)
大多数の文系学生の進学先となっているのは言うまでもない。ほとんどが一般的企業に就職することを目的としているわけである。国公立大学での4年間の学費は、入学金を含めて180万円。これに前述の留年係数0.9で除すれば、200万ということになる。私学の場合は400万程度ということになる。 税理士や公認会計士を目指して、さらに大学院や専門学校に通う費用は別途検討することにする。

法学部
前掲の経済系学部と同額。国公立で200万円、私学で400万円程度である。一般的な企業に就職するか、公務員を目指す学生が大半と思われるが、法曹界を目指す場合は大学院への進学や、ロースクールへの進学例もあり、その費用は別掲する。

文学部
学費は前二者と同額である。教育関係に就職する他に、一般企業への就職、あるいは心理関係や公務員を目指す学生が多いと考えられる。

工学部
今日の技術大国日本を支える、技術戦士を目指す学生さんたちの進学先である。最近では大学院進学例も多くなってきたが、あくまでもモデルケースとして、4年間の学費を計上した。国公立で250万円、私立で500万円程度ということになる。

理学部
一般企業への進学も考えられるが、教育関係を目指す比率が大きいのが特徴である。学費は工学部と同程度である。

教育学部
文字通り、教員養成を目的とする。中学校、小学校の教諭養成課程、幼稚園教諭、体育や芸術(音楽、美術)などの専門教諭の養成課程にも分化する。学費は一般学部と大差ない。しかし、教員採用試験の競争倍率が都道府県によっては非常に高率であることから、卒後直ちに就業する例がむしろ稀な場合も多い。したがって、教職に就かずに、一般企業へ就職する率が高い地区もある。

農学部
バイオ技術の進歩により人気が集まっている学部である。教育関係への就職以外に、一般企業への職例が大半である。4年間の学費は一般理科系学部と同一である。

獣医学科
獣医師を養成するための農学部の一専門学科である。修業年限が6年になり、それだけ学費が一般学部より割高になる。国公立で300万円、私立で700万円程度となる。空前のペットブームを反映して、獣医師の需要が急増し、人気のある学科といえる。

薬学部
修業年限が6年となり獣医学部と同様の学費を要す。薬剤師国家試験合格後、病院に勤務することがほとんどとである。医薬分業が強力に推進されたことで、調剤薬局の開業が非常な勢いで増加した。現在ではオーバーストア化しつつあり、個人での薬局開業は今後困難になる可能性がある。大手チェーン店の系列傘下に入って勤務する形態が主流となるかもしれない。

歯学部
歯科医師の養成目的で、修業年限は6年である。注目すべきは、昭和50年代の歯科医師国家試験の合格者数が年間500名以下であったものが、平成18年度は2673名であり、非常に増加していることである。歯学部、歯科大学が7校であったものが、27校に増え、一学年あたりの総学生数は三千名に達する。卒業後、勤務医としての在職年数が非常に短く、数年で開業するので、医療機関数がこの30年間で十倍以上に増加している。

学費は、国公立で三百万程度は同一であるが、留年係数、国家試験合格係数を勘案すると400万近く必要である。私立の場合、入学金を含めて非常に幅が大きいが、平均3000万円程度である。同様に留年係数、国家試験合格係数を除すれば4000万以上は必要となる。さらに、国公立、私立を問わず、実習などの材料、機器の費用が非常に高額である。平均300万円ほどが別途必要である。

医学部
医師養成のための学部である。平成16年より、卒業して医師国家試験合格後に、2年間の臨床実地研修が義務づけられた。修業年限6年で、国公立で300万円、私立で平均4000万程度である。それぞれに留年係数、国家試験合格係数を勘案すれば、400万円、5000万円に跳ね上がる。

芸術学部(音大)
修業年限は4年で、学費は国公立で200万程度であるが非常に難関学部である。私学では大きい幅があるが、平均500万程度であろう。しかし、個人レッスンなどに非常に高額な費用を要する。また、楽器に要する費用は我々素人では想像もつかない。国外留学も、路を究めるに当たっては必須であるらしい。もちろん大学入学に到るまでに要するレッスンそのものも、年月も長く、また費用も非常に高額である。


3.専門学校の費用
大学と異なり専門学校ではどのくらい授業料が必要になるのであろうか。取得資格ごとに、学校も修業年限も異なるので、具体例を挙げてゆくことにする。

理容美容師専門学校
理容師、美容師の養成学校では、いずれも修業年限は2年である。入学資格は高校卒業が前提である。 美容師単独の学校はほとんどなく、併設されているところがほとんどである。ほぼ日本全国にあるが、教育費用には大差が見られない。おおむね、2年間で実習費用や材料費用を含めて200万円程度である。卒業後は国家試験に合格して資格取得となる。複数の理容師、美容師を使用するような開業形態の場合には、管理理容師、管理美容師の資格が別途必要となる。受験資格は実務年数3年以上である。

調理師専門学校
和食のみならず、フランス料理などの西洋料理をこなす技能者の養成機関である。調理師の免許は実務経験が2年以上あれば受験資格があるので、特にこの学校を卒業しなければならないという規定はない。また、調理師免許がなければ調理できないわけでもない。 修業年限もまちまちであり、教授内容も玉石混滑かもしれない。学費も非常に高額なものから、実際的なものまで多種多様(年額200万円から2年コースで400万円以上)である。卒業してすぐに一流シェフになれるのではなく、弟子入りのような修行を要するのが一般的である。 最近、パティシエという洋菓子職人に人気があり、こういった専門教育課程も設けられている。

臨床放射線技師専門学校
医療機関でレントゲンなどの放射線検査を行う技師の養成機関である。最近では、医療関係の他の有資格者の養成機関を合わせた専門学校も増えてきたが、病院などの付属学校が主流である。修業年限は2年である。学費は合計200万円ほどを要する。卒業後、国家試験に合格する必要がある。

臨床検査技師専門学校
医療機関で生理学的検査や、血液などの生化学的検査を行う技師の養成機関である。高等学校卒業が前提である。修業年限は2年で、学費は200万円ほどを要する。 医療費削減のため病床数の制限が国の方針となり、病院の規模が縮小傾向にある。このため、医療産業が右肩上がりの時代に整備され出した臨床検査技師の養成機関であるので、現在となっては明らかなオーバースクール状態である。新規の採用はちょっと難しい傾向になっている。

視能訓練士専門学校
視能訓練士といっても何のことか分からないかもしれないが、病院などの眼科で、検査や弱視の治療を行う国家資格者である。短期大学卒以上の学歴を必要とするが、就学年数は1年のみで、民間の専門学校では、平均200万ほどを要する。他に夜間の養成課程もあって、こちらは3、4年を要するが、トータルの学費も大差ない。

ほんの十数年前までは、大阪と新潟の国立専門学院があったのみで、定員は2校合わせて百名ほどであった。今日では、規制緩和の波に乗って、民間の専門学校が多数できたため、全国で22校、総定員一千名弱となった。やはり数年でオーバースクール化するのではないだろうか。規制緩和の最たるもので、学校法人格でなく、株式会社でも学校経営が可能になり、全国に専門学校があまた開校することになったのである。就職先は、眼科医療機関以外にはまず考えられない。また、「視能訓練」という本来の業務は、弱視に 対する治療・訓練であり、小児眼科を掲げる施設以外には実際問題として必要性は薄い。他の眼科検査業務は、前掲の臨床検査技師や看護師でも充分行えることである。

鍼灸師専門学校
鍼治療および、お灸を行う施術者の養成機関である。修業年限は3年である。学費は300万円ほどに上る。国家試験の合格率は八割弱で、これを留年率として計算すれば、約400万円になる。 日本古来の東洋療法である。入学資格はない。伝統的に身体に障害を持つ人たちにも広く門戸が開かれているのが特徴であった。しかし、今日では東洋医学の一部門として確固たる地位があり、健常者の入学者がほとんどである。一方で、純然たる東洋医学とは少しニュアンスの異なる、柔道整復師学校に人気が集中しているのが現状であろうか。この十年間に鍼灸師の学校の定員は2700名から千人の増加であったのに対して、柔道整復師専門学校は800名が4000人もの増加を見た。

柔道整復師専門学校
健康保険法の拡大解釈によって医療保険を暗黙のうちに適用されだしてから、急激な拡大をきたした業界である。ほとんどが「整骨院」というあいまいな名称を看板に掲げる。柔道整復師、すなわち骨接ぎ、「接骨」なのか、「整体」、いわゆるカイロプラクティックなのか分かりにくい。造語であろうか。ちなみにこの整体師というのは資格でもなんでもない、民間療法である。

いわゆる監督官庁は保健所、すなわち厚生労働省であるが、公式の言葉としては、「整骨」なるものは存在していない。柔道整復師というように、本来柔道などの武道に際しての脱臼、骨折などに対しての徒手整復から発展したもので、日本独自のものである。

本来、接骨すなわち骨折に対する、骨接ぎという外傷処置が治療目的である。保険診療についても、外傷という緊急の処置に限定しての適用であった。今日、骨折に対して、正当な整形外科的治療を求めるのが当たり前であって、柔道整復師に求める患者はまず皆無であろう。一体何を目的として、「整骨院」に患者が日参するのか、それは按摩、マッサージである。「凝ってますネ」といわれて、肩をもんでもらうためである。これが保険が利くというので皆、通うようになった。

修業年限は3年である。学費は300万円ほどに上る。入学資格は高校卒業である。似ているようで異なるのが「あん摩・マッサージ・指圧師」である。国家試験があるが、誠灸師に近い立場の資格である。 柔道整復師の大きな特徴は、自営が多いということである。他の資格、理学療法士などが病院での勤務以外に就業することが考えにくいのと好対照である。3万5千人の柔道整復師のうち実に8割が独立開業して、自前の施術所を構えているのである。国家試験は、財団法人柔道整復研修試験財団というお定まりの厚生労働省の外郭団体が取り行っているのである。

看護専門学校
看護師の養成学校で、入校資格は高卒で、修業年限は3年である。看護師国家試験に合格しての資格取得となる。受験資格は、看護専門学校を卒業する以外にも、3年制の短期大学看護学科や、4年制の看護大学、保健学部などの看護学科を卒業するなどの方法もある。しかし、ほとんどの養成機関は看護専門学校である。またその大半は病院などの付属学校である。私学の場合が多いが、学費は、実習費用、教材費などを含んで、3年間で二百数十万円程度である。やはり、国家試験合格率の0.9および留年係数を勘案すれば300万円ほどに上る。国公立の場合はおおむねその半額である。また、私学の看護短期大学や看護学部は高額で、400万円以上を要する例もある。一方、個人的な病院などの付属機関としての看護専門学校もあり、学費が非常に安価なものもある。資格取得後に、保健師、助産師学校に入学し、それぞれの資格を取得するという進路もある。

実際にはもっと多種多様の専門学校が存在するが、あまり一般的でないものや、国家試験による免許制度に対応していない職種については取り上げていない。また、大学と異なり、入校試験などを課していないところが大半で、入校資格も高卒が大多数であるものの厳密には一定していない。このような現実に照らして、入校に関しての難易度は評価せず、したがって大学受験の場合に必要と計上した補助学習費はゼロ査定とした。

大学や短期大学を卒業してから、このような専門学校に入校するケースもあるとは思うが、この際、割愛することとした。また、看護師免許取得についても、大学や短期大学というような学制を敷いているケースのほうが少なく、入学試験についても非常に難関であるケースもある。具体的には東京大学医学部保健学科、京都大学医学部看護学科などで、非常に稀な進学コースであり、取り上げなかった。

わが国では公営ギャンブルとして、競輪、競艇、競馬が代表的である。それぞれの選手を養成する、専門の育成機関がある。日本競輪学校、やまと競艇学校、日本中央競馬会競馬学校である。入学資格は、競輪学校が高校卒業以上である以外には、後二者は中学卒業以上である。前二者は、修行年限は1年、競馬学校は3年である。

競輪学校は学費の案内はない。競艇学校は寮費のみの60万円。競馬学校は、3年間で寮費100万円を含んで400万円が必要である。競輪学校は半期75名の年間150名。競艇学校は、半期60名の年間120名。競馬学校は1学年15名の募集である。卒業時に体重が47.5キログラムを超過すると、退学処分されることがあるそうである。年間の卒業生はなんと8名前後である。
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