略語やキーワードを記憶するための暗記カードの作りかた

1.覚えるためにどんどん捨てる必要がある
本題に入る前にまず覚えるという仕組みを理解しましょう。
記憶の分け方はいろいろですが、ともあれ短期記憶と長期記憶の違いは無視できません。短期記憶は、いったん脳の中の「海馬」(大脳辺縁系の一部)というところに入るとされています。

そしてこの海馬の中で1ヶ月ほど神経回路を駆けめぐり、選ばれたものだけが長期記憶になって、「側頭葉」というところに送り込まれていくのです。

こうした、一度覚えた事柄を思い出すには、脳に最初と同じ刺激を与えてやります。「記憶する」とは、この刺激を繰り返して行い、訓練することです。つまり再学習が必要になるわけです。そうでないと、せっかく新しく仕入れた知識も忘却の浮き目に合ってしまいます。

とはいっても、勉強に使える時間は有限です。なので、繰り返し訓練(再学習)を行うに当たって、何を覚えて何を捨てるか、その選択が、極めて重要なポイントになってきます。

「覚える」べき知識がある反面、「捨てる」べき知識もたくさんあります。逆説的ないい方になりますが「覚える」ことは「捨てる」ことなのです。

数字を暗記しようとするな
文科系の場合ですが、勉強する際に捨ててもいい知識とは、どんな種類のものでしょうか。それはまず数字です。

次に、無機的に並べられた列記事項です。こういうと、昔からの暗記勉強に慣れている人は「えっ?」と驚くに違いありません。「数字を暗記しなくていいの?」というわけです。

こういう人は覚えにくいことを暗記すると、格段に知識が増えたように錯覚する人たちです。しかし、誤解しないでいただきたいのは、数字や列記事項は、事柄の核心というわけではないのです。大切なのは数字ではありません。その数字を含んだ事象の成り立ちや、またはその数字が意味している内容のほうなのです。

「なぜ、そういう数字になるのか?」「いつからか?」「いまはどう変わっているのか?」ということのほうが、はるかに本質にかかわっています。

数字はこれらを具体的に説明したり、細目を規定したりするためにあるものなのです。数字や列記事項を暗記することこそが勉強だという考え方は、過去の詰め込み式教育の名残りにすぎないことを、ここでしっかりと確認しておきましょう。


2.書かずに音読して覚える
「書く」はもっとも時間のかかる情報収集法
書いて覚えるという暗記方法がありますが、あまりおすすめしません。なぜなら、「書く」という作業はとにかく時間がかかるからです。

情報を得る際、「黙読する」→ 「音読する」→ 「書く」の順番で時間がかかります。
よく本のポイントをノートにまとめるという勉強法をとっている人がいますが、これは私にいわせれば、「書く」というもっとも時間のかかる方法で情報を収集していることになります。

何のためにノートをつくるのかわかりません。そのノートはそのあとどうするのでしょう? 「本で読んだことを、あとで見直すため」という人がいますが、その程度のために、何時間もかけてノートをつくるのでしょうか?

それに、自分の読みにくい字で書いたノートを読むより、きちんとした活字の状態で売られている、プロが書いた本をくり返し読んだほうがずっと読みやすいはずです。

また、よく講師が板書した内容をノートに丸写しする人がいますが、このタイプの受験生はたいがい合格までに時間がかかります。彼らの問題点は、「書くべきか、そうでないか」を吟味していないことです。つまり、何も考えていないのです。これは勉強する姿勢として一番よくありません。

勉強をする際には、「書く」という作業をできるだけ減らす方向で進めていったほうがよいでしょう。
もし、あなたが学校に通っているならば、講師のいったことをすべてノートにとろうとは思わないことです。学校では要点をまとめたテキストなり、プリントなりが用意されているはず。それをしっかりと覚えるだけで十分です。さらに、講師が「これは重要です」といった内容だけを、テキストなどの余白に書き込んでいけばいいのです。

音読ならスピーディーかつ確実にインプットできる
情報を得ようと思ったら、本を読むのが一番です。さらに、その内容を覚えようとするのであれば、「音読」することです。くり返し音読することで、スピーディーに、かつ確実に情報をインプットすることができます。

音読が暗記の作業でどれほど効果的かは、現在、さまざまなところでいわれており、脳科学の世界でも実証されてきています。
どんな試験であれ、暗記するときには、ぜひとも「音読」という方法を積極的に取り入れてみてください。間違っても、ノートをつくったりしてはいけません。
音読でスピーディーかつ確実に覚えてしまおう。


3.暗記法の王道は暗記カードだ
暗記対策として一番有効な方法は、暗記カードをつくることです。週刊誌の4分の1の大きさのB7判(例×128ミリ)のカードを4種類用意します。4種類の中身は、「数字カード」「暗記カード」「重要項目カード」「弱点カード」です。

この4種類のカードを、手元に置いておき、勉強を進めていくうちに暗記か記憶が必要と思われる箇所に出くわしたら、そのつどカードに書き出しておきます。

さて、暗記対策としては、作成ずみのこのカードの中から、「数字カード」と「暗記カード」を使います。この2つのカードを使いはじめるのは、勉強の初期からではありません。早くやると忘れてしまいます。試験日の1ヶ月前あたりからが適当ですね。

このころから、折に触れてカードを取り出しては、繰り返し覚えるのです。暗記事項は意外にありません。多くてもB7判のカードで表裏5枚に入るでしょう。なお、「重点項目カード」と「弱点カード」は暗記の目的で使うのではありません。

暗記カードをつくる際のポイント
暗記カードに記入するときには、その時点で覚えようとする必要はありません。オーバーにいえば、暗記しようとしないほうがいいほど。それよりも「なぜか」という理由を考えるのです。

例を出します。「直ちに」と「遅滞なく」と「速やかに」の3つは、いずれも「時間的拘束性」の速さや重要性を表す法律用語です。ここでは、時間的切迫性が強い順に並べました。

テキストを読んでいくうちに「速やかに」という表現が出てきたら、カードに書きながら「なぜ直ちにではなく、速やかになのか」と考えてみるのです。

その理由がわかったらそれもいっしょに覚えると、もう記憶はバッチリです。単なる暗記だと、言葉だけなので、「直ちに」か「遅滞なく」か「速やかに」か、時間がたつと判然としなくなってきます。しかし、理由と一緒に覚えると、そこにストーリー性が生まれます。つまり、エピソード記憶に近くなるので忘れにくいのです。


4.NGO、COO…「略語」をどうやって覚えるか
UN、PL、CS、ROM、FX、CEO…。アルファベットの頭文字だけを取った略語があふれています。この意味、いくつおわかりでしょうか。
こうした略語は、意味がわからないと新聞や雑誌も読めないし、人との会話にも出てくるのでとても不便です。

こんな略語に強くなる方法はあるのでしょうか。方法は2つあります。1つは条件反射学習法。学生時代にやった、単語カードで英単語の意味を覚えるのと同じ方法です。
カードの表に略語を書き、裏側に意味と内容を書きます。そして、表を見て裏の内容を想起します。何回も繰り返していると、間違いなく記憶されます。

「UN」と聞けば「国際連合」。いわば条件反射のように、口をついて出てくるようにしてしまうのです。ある程度は効果的ですが、機械的記憶法なので、時間がたつにつれ忘れてしまうのが難点です。それに、覚えるまで時間もかかります。


「CEO=最高経営執行責任者」と覚えると応用がきかない
もう1つの方法は、横文字を語源ごと覚えてしまう語源学習法です。言葉(音)を意味と一緒に覚えてしまうので、記憶の歩留まりは保証できます。しかも、覚える時間も少なくてすみます。推奨している記憶法は、こちらのほうです。

たとえば、CEOは「最高経営執行責任者」の略ですね。これを「CEO=最高経営執行責任者、最高経営執行責任者…」と繰り返して覚える(条件反射法)のではなく「CEO=chief(最高)executive(経営執行)officer(責任者)の略」と覚えます。英語の単語の意味さえ知っていれば、自然に覚えられるでしょう。

この方法だと、EをTに変えた場合でも「CTO=chieftechnical(技術)officerの略=最高技術責任者」と類推がききます。また、EをFに変えても「CFO=chief financial(財務)officer略=最高財務責任者」のことかな、となるわけです。

英語が苦手で理解できないという人の場合は、この機会に基礎的な英単語の勉強も合わせてやればいいのです。一石二鳥の記憶術です。
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